世界の使い方
いまから60年前、スイスに住むNicolas Bouvierという人は旅に出た。
画家の友人とともに、たびたびエンストする古くて小さな車一台、ユーラシア大陸を東へ向かう。
あるのは2年の月日と4ヶ月分のお金。
「観光」とはかけ離れた旅がある。
そこに道なんてあるのか、一般的にはそう思われるところも彼らは進んでいく、ときに車を押してでも。
現在もそうだが、当時も社会的に難しい土地とされていた東欧や中東を訪れ、
そこで人や風土、気候、経済、空気や香りに触れ、感じとり、移動する。
世界は水のように身体のうちをすり抜け、わずかな時間だけ、その色を貸してくれる
Nicolas Bouvier:著 『世界の使い方』